あれこれいろいろ

アトリエに大黒様がやってきた 平塚運一の版画

一十舎アトリエに写真の大黒様がやってきて、壁から作業を見守って下さることとなりました。

断捨離中の義父からの贈り物です。アトリエには大黒様と恵比寿様の置物があるのですが、それを見た義父がこの大黒様の版画も一緒に置いてくれるとよいということで、送ってくれたのです。

この版画には1924年 Hiratukaの署名があり、版画家平塚運一29歳の作であることがわかります。今から100年近く前の作品ですね。平塚運一は、日本近代版画の先駆者のひとりで、棟方志功を指導して、ともに活動したりした人だそうです。

どのような経緯で義父が平塚運一の版画を入手したかというと、そこにはこんなエピソードがあったそうです。

ある日、版画や絵画を趣味とする義父が平塚運一の展覧会に行ったときのこと、とても感じのよい作品があったのですが、いかんせん値段は15万円だったか30万円だったか、いずれにしても買えるような値段ではありませんでした。展覧会を出るとき義父は感想として、「とてもよかったが、あまりに高価で…浮世絵版画はもともと庶民が買って楽しむことができる芸術だったが、この値段では版画も庶民には手が出せず…」という趣旨を書いてきたのだそうです。すると後日、当時アメリカ在住だった平塚運一の指示を受けて日本にいるご家族の方から版画が義父に送られてきて、自分がよいと思う値段をつけてくだされば結構ですという内容のメッセージが添えられていたとのことでした。義父はびっくりして、あれこれ考えた末に3万円ほどの値段を払ったように思うとのことでした。これをきっかけに義父と平塚家との間に交流がはじまり、折にふれて版画を送ってもらうこともあり、大黒様の版画もこうして送られた作品のひとつということでした。

こういうエピソード付きの大黒様がアトリエにやってきました。いろいろな経緯を経てものが流転していくさまは不思議です。アトリエにきてにこにこ笑っている大黒様を見ると平和な気分になりますが、その平和な気分を乗せたウクレレを作りたいと思います。

それにしても前から思うのですが、大黒様の姿というのは、サンタクロースに似てるなあと私はいつも思うのです。大きな袋をもって幸運を運んでくる存在で、ゆったりした服に、頭には帽子をかぶり、ひげがあって、まるっこい体形。一方はそりに乗ってトナカイが付き従い、一方は俵に乗ってねずみが付き従います。大黒様の打ち出の小槌は、サンタの鈴の音を思わせます。大黒様がアトリエにやってきた! というと、サンタが街にやってきた!という歌を思い出しはす。サンタと大黒様は洋の東西にわかれた親戚でしょうか。

ちなみにアトリエに前からある大黒様と恵比寿様の置物はこちらで、こちらは私の両親が人からもらって、それを私が相続したという流れでした。

一十舎のウクレレも様々な流転をして想像もしなかった誰かの手に渡ったりするのでしょう。

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