16世紀以降の大航海時代の帆船で小型ギターが世界に渡る様子に思いをめぐらしながら時々書いていますが、陸の海である砂漠を超えて楽器を運んだのは駱駝でした。
上の写真は、正倉院所蔵の螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)。中国は唐の時代、日本は奈良時代、8世紀ころのものです。表の装飾を拡大するとこうなります。
駱駝に乗った人が手にしているのは四弦の琵琶です。駱駝に乗ってシルクロードを旅する人は、こうして駱駝の上で楽器を演奏したりしたのですね。
おもしろいのは、この螺鈿紫檀五絃琵琶自体は5弦なのに、描かれている方の琵琶は4弦だというところで、どちらもイラン式琵琶の系統ですが、5弦琵琶はインド発祥、4弦琵琶はペルシア発祥で、異なる発祥の琵琶が一本の琵琶に併存しているところです。これらがどちらもシルクロード経由で8世紀の唐の時代に国際色豊かに併存し、奈良時代の日本にも入ってきていたわけです。