ルネサンスギター

今読んでいる本 中世・ルネサンスの音楽 皆川達夫著

ルネサンスギターを作っているにもかかわらず、ルネサンス期の音楽のことはあまりよく知らないなと思いまして、この本を読み始めました。

現代人は、バロックあたりまではなんとなくイメージできても、中世・ルネサンスの音楽については何のイメージもないことが多く、音楽はまだ未発達な時代というふうに漠然と思っている方も少なくないと思います。

しかし、この本を読んでいると、そのイメージがじわじわと崩れてきます。近現代音楽と異なる体系のすごいことをやっていたらしいと、だんだんに、ジワジワとわかってきます。急にはわかりません。あくまでジワジワです。

私がそれを思ったのは特に中世の多声音楽です。複数のメロディ、複数の声、複数の歌詞、複数のリズムが、同時並行に何重にも重なり、ずれたり、前後したり、絡まったり離れたり、輪を描いたり、幾筋もの糸が綾なして織物を織りあげるような、もうとんでもなく立体的、多次元的、宇宙的に音楽を紡いでいき、これが何とも美しい響きを作り上げるのですね

それにしても便利だと思うのは、たとえばギヨーム・デュファイというルネサンス初期の作曲家の解説が出てきたら、YouTubeでギヨーム・デュファイの音楽を出して、本の解説を実際の音で確認しながら読めみすすめられることです。こうして同時に目と耳で立体的に読んていると、デュファイの音楽の高度なことがより一層じわじわとわかってきて、現代人はもはやそこへの感性を忘れてしまって、ちょっと聞いたくらいで、「ふーん、よくわかんないや」としか思えなくなっているが、これはもしかしたら退化しているのかもしれぬ、などと思ったりします。

まあ、そんなに劇的なことが書いてある本でもないので、退屈ななじみのない音楽の歴史に読むのを挫折する方もいただろうと思いますが、退屈の向こうからじわじわと別次元が浮かびあがって見えてくると、俄然おもしろくなってジワジワ興奮してくる、そんな本です。

このジワジワ感が案外大事だと思うんです。近・現代音楽は、ワッと一気に盛り上げて興奮する感じの構成が多いですが、中世・ルネサンス音楽は、あくまでジワジワと宇宙的な広がりに入っていく感じで、このワッとルートとジワジワルートでは、入っていく次元が異なってくるような気がするのです。

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