国産材をいろいろ使ってルネサンスギターを作っていますが、国産材を使い続けて思うことは、こんなことです。
第一に、国産材を使うと、音の個性が使う木で大きく変わってくるので、そこから生まれる音世界がとても豊かだということ
第二に、日本は、広葉樹も針葉樹も種類が多く、亜寒帯から亜熱帯まで、低地から高地まで、乾燥地から湿潤地まで、いろんな性質の木の選択の幅が広くて自由だということ
第三に、選択の幅を広くすると特定の樹種に集中することがないので、木を乱獲しないで済むのではないかということ、(従来特定樹種ばかりに人気が集中して乱獲を招き、枯渇を招きがちでした)
第四に、特定人気樹種にこだわる意識を少しゆるめるだけで、いろんな木が実は楽器に向いていることがわかり、バリエーション豊かな選択の自由が広がってくるということ
第五に、国産材の音がとてもよい!ということ。スプルースやシダーやメープルやマホガニーなど、ギターの定番的な木ももちろんよいですが、日本の木をいろいろ使うと、それに劣らない魅力を発揮してくれる
などなどです。
内容は若干未整理な感もありますが、全部ひっくるめると、選択の自由、豊かなバリエーション、そこから生まれる音世界の広がり、それが持続可能な資源利用にもつながると、そして最後にとても楽しい、とまあこんなことです。
ここでちょっとおことわりしておきますが、「国産最高」みたいな、日本人えらし的感覚は含みませんので念のため。日本にいると日本の木がこんなに入手しやすくて、こんなに広がりますということを申し上げているだけなのです。
むしろ、世界の様々な地域の人が、その土地にある様々な木にもっと意識を広げて楽器に使って行くとおもしろいと思っています。
国産も外国産も、木に貴賤や優劣があるわけはありませんし、高級材も低級材も本来ないのだと思います。巨匠製作家が使った木と同じでなければ本物じゃないとか、巨匠演奏家が使っている楽器と同じなのがいいとかいう意識もちょっとゆるめてみると、案外自由に遊べて案外よい音が響くようです。世界じゅうの木のバリエーションを楽しむと、まことに楽しい音世界、すなわち音楽世界が広がるんじゃないかと思います。