作レレ

ブリッジにサドルがある理由 ウクレレのブリッジと古楽器のブリッジ

ウクレレのブリッジと古楽器(ルネサンスギターやバロックギター)のブリッジを見比べてみてください。

最初の方がウクレレで二番目がルネサンスギターです。何が一番のちがいかというと、実はサドルの有無がちがうのです。弦の結び方は同じですが、ウクレレの場合は、ブリッジに結びつけられた弦は、サドルの上を経由してからナットの方に伸びていくのに対して、ルネサンスギターでは、ブリッジからサドルを経由せずにそのままナットに伸びていくのです。

サドルとは一体何のためにあるのでしょう。

サドルは指で横方向に弾かれた弦の横振動を縦振動に変換して表板に伝える役割をしているそうです。弦振動を効率よく表板に伝える工夫と言えます。またサドルが弦を持ち上げることでテンションを上げて強い音を出せるようにする工夫でもあるでしょう。

では古楽器にはなぜサドルがないのでしょう。古楽器は弱いテンションの複弦なので、ふたつの弦を同時に上から押さえつけるにようにしながら弾く動き自体から十分な縦振動を作ることができたので、サドルを必要としなかったのかもしれません。古楽器の時代は弱いテンションから生まれる柔らかな音を複弦で膨らませるという発想の音作りだったので、テンションを上げる欲求もあまりなかったと思われます。複弦だと総弦数が最低でも七本、リュートでは20本以上となったので、テンションを上げすぎるとブリッジが壊れる危険もあったでしょう。当時使われていたガット弦という素材はテンションを上げることに限界があったということもあったと思われます。

こんなわけで現代のウクレレのブリッジと古楽器のブリッジはサドルの有無で大きく違うのだと思います。弱いテンションを基礎にした音作りと、強いテンションを基礎にした音作りの違いです。

一十舎のウクレレは、大きな音を出すよりも、家族友人などの身近な空間で心地よい音が出るものにしたいと折にふれて書いてきました。それはどうやら、弱いテンションを豊かに響かせるという古楽器の発想にかなり近いわけで、そうするとサドルのない弱いテンションのウクレレというのも十分に考える余地があるなあとも思ったりします。

私の中で、ウクレレとルネサンスギターが自然に交錯してくる感があり、冒頭の写真のレインボーブリッジのように、16世紀ころの古楽器と現代のウクレレの間に橋がかかったら、おもしろい展開が生まれそうな気がします。