われわれが聴いている音は空気中の波ですが、多分横波(下図の上の方、うねる形の波)のイメージの方が多いと思います。でも、実は音波は縦波(下図の下の方の波、粗密波ともいう)で、うねるような形の波ではなく、空気の粗密が伝播していくものです。冒頭の音叉の図形のように音が横波のうねる形で表現されているのは、縦軸を振動の強さ、横軸を時間にして図形化した結果、そういうイメージ図になっただけです。

横波は波の伝わる方向と振動方向が直角な波で、縦波は波の伝わる方向と振動方向が一致する波なのですが、横波は媒体に横ずれを戻す力(ずり弾性)があることから生まれ、縦波は媒体の粗密を元に戻す力があることから生まれます。気体や液体にはずり弾性がないので横波は個体でしか伝わりませんが、粗密を元に戻す力は気体にも液体にも個体にもあるので縦波はどの媒体でも伝わります。
いずれにしても媒体がない真空では縦波も横波も起こりません。そこで疑問になるのが真空を伝わる光(電磁波)はどういう波なんだろうということなのですが、磁場が変化すると電荷に力が働いて電荷を移動させ電流が流れ、電流が流れると磁場に変化を及ぼす、という相互作用が起こり(電磁誘導)、このような相互作用により空間的なエネルギーの “ 周期的な振動 ” 状態が作り出され、空間を電磁的エネルギーが伝播されていくのです。これを「電磁波」と呼びます。

というわけで、われわれが聴いている音楽は空気の縦波です、ということになります。
「このバッハの縦波はなかなかいい」、「ストラディヴァリウスの粗密波がたまらん」、「ベートーヴェンの空気の粗密の迫力がすごい」というのが論理的に正しい音楽の楽しみ方ということになります。たぶん。
もし宇宙の音楽や天上の音楽を聴いたという特異体験があるなら、宇宙には縦波や横波の元になる媒体がないので、その音楽の正体は電磁波にちがいありません。