あれこれいろいろ

弦楽器の名前に「〇〇t〇r〇」系が多いの件

前に紹介したペルシャ方面で古くから愛されている弦楽器タール(tar)。

タールの語源は、「弦」又は「線」という意味の言葉です。このタールの前に弦の数として数字の2をくっ付けてドタール、数字の3をくっけてセタールという楽器もあります。

このタールをアルファベットで書けば「tar」ですが、「t」+「r(又はl)」という子音の並びで呼ばれる弦楽器がヨーロッパ方面にはたくさんあります。tとrを繋ぐ母音は地域によって色々です。

たとえば現代を代表する例はギター(guitar)。tarが語尾に付いています。

古代ギリシャにさかのぼれば、リラの一種のキタラ( kitharā)。ラテン語ではチタラ(cithara)。tとrの間にhaが挟まります。

それからドイツ、フランス、イタリアなどのチター(ツィター)。独: Zither、仏: Cithare、伊: Centra da Travola

中世ヨーロッパには、シトル(Citole,Sytole,Cytiole,Gytollet)。

インドに行くとシタール(sitar)。

フィンランドに飛んでカンテレ(kantele)。

ほかにもたくさんあると思いますが、これらの語の繋がりが気になります。楽器の伝播経路と言葉の伝播経路は必ずしもイコールではないですが、ある程度の相関関係はあるにちがいありません。

弦楽器の名前にtとrが使われる例は西欧方面には見つけやすいのに対し、インドを除いて東アジア方面にはあまり見つかりません。しかし言葉の意味に注目すると、例えばペルシャのセタールが3弦又は3線という意味ですが、同じように中国では三絃があり、日本には三線又は三味線があるというように、意味的な共通性が東アジアには見られるようにも思います。

表音文字の文化圏では音の共通性が伝播し、表語文字の文化圏では意味の共通性が伝播するという傾向でもあるのでしょうか。あるいは、ヨーロッパ諸語もペルシャ語もヒンディー語もインド・ヨーロッパ語族なので、5000年前頃のインド・ヨーロッパ祖語に、tとrを使う弦又は糸を示す共通単語があった可能性もありそうです。

 

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