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ガムラン音楽の特徴 西洋音楽と別体系のようなあり方

インドネシアの様々な儀礼や演劇に必ずと言っていいほど登場するガムラン音楽。1889年のパリ万博でガムラン音楽を聴いたドビュッシーが大きな影響を受けたことはつとに有名です。インドネシアの儀式ではトランスに入る人も頻出するその不思議な響きの特徴を、目次的に書き抜いておきます。

・大小様々な青銅製打楽器群の響きの重なり。そこに二弦弓奏楽器、木琴、竹笛、金属弦の琴、歌が加わる。

・同じ楽器でも音程が少しずつずれて、独特の音のうねりが生まれる。

・1オクターブを均等に5分したスレンドロ調(日本民謡のヨナ抜き音階に似る)と不均等に7分したペロッグ調(沖縄音階に似る)のふたつの音階がある。

・基本旋律が簡単に記載された、たった数行の譜を繰り返して演奏する。

・拍の早さは伸び縮みし、拍が延びた隙間を装飾楽器が素早く埋めていく。それらの変化が音のざわめきのような響きになる。

・四拍子なら、最後の四拍目が一番強く、一拍目と三拍目が弱拍となる。西洋の拍と反対。

・歌の内容は曲と関連がなく、歌は合奏の中の装飾音の一つのような役割を果たす。

・大編成でも指揮者はおらず、楽器同士が合図を送ったり答えたりしながら相互関係で音楽が作られていく。

・一曲ごと完結という感覚ではなく、儀式の間、ずっとガムランは鳴り続ける。

・楽器相互の対話、おしゃべりのような音楽。

・演奏者は複数の楽器を演奏できることが一般で時々交代したりもして、特定楽器の名演奏家、ヴィルトゥオーゾという概念はない。

・作曲者の意図を解釈するという発想もない。(簡単な旋律の骨組みしか書かれていないし、作曲者不明もふつう)。

・同じ曲がその場のTPOに応じて、楽しくもなり(結婚式)、しっとりにもなり(葬式)、毎回違うアレンジの演奏になる。

・王宮儀式、農耕儀礼、精霊祖霊信仰、寺院のお祭り、結婚式や誕生日などのお祝いごと、種々の年中行事など、何等かの催し事の背景音楽として演奏されることが多い。

・舞踊やお芝居と共に演奏され、それらと一体のものとしてあることが多い。

・ベテランから経験年数の浅い人まで参加し、手拍子や近くのものを叩いてリズムをとる人や、ただのおしゃべりの話し声までが参加している感覚。やがて周囲の喧騒もガムランに入っているような音空間が生まれる。

・繰り返し朝まで続く音と踊りと演劇の中で、トランス状態憑霊状態になるような人が普通に出てくる。人々が多かれ少なかれ濃密な神霊的な空間を体験的に共有する。

以上、本や様々なサイトに書いてあることをざっと書き抜いてみましたが、こうして見ると、西洋音楽(特にクラシック音楽)とあれもこれもちがうあり方に、あらためてびっくりします。

ここまでちがう理由は、言い古された分析かもしれませんが、唯一絶対神を志向する宗教観と無数の神霊祖霊動物霊が織りなす多神教的宗教観を反映して、異なる知の体系が生まれ、異なる音楽体系が生まれているのだろうと推測されます。

参考 インドネシア芸能への招待 皆川厚一著 ほか

 

 

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