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正調ソーラン節と正調でないソーラン節

日本で有名な作業音楽のひとつにソーラン節があります。

ソーラン節は北海道の積丹から余市付近の鰊(ニシン)漁場の作業歌ですが、鰊漁の作業内容に応じて、<船漕ぎ音頭><網起し音頭><沖揚げ音頭>などがあり、ソーラン節はその中の沖揚げ音頭です。沖揚げとは鰊を汲み船という運搬船に移す作業です。

江戸から昭和初期にかけての鰊の数はものすごくて、鰊が海面を白くして押し寄せると漁場は一気に戦場のようになり、三日も四日も眠らずに沖揚げしたり、鰊置場に鰊を背負ったまま倒れ込んで眠ってしまった人の上に鰊が積み上げられてしまうという有り様だったそうです。

その鰊漁の働き手が、「ヤン衆」「神様」「鰊殺しの神様」「若い衆」などと呼ばれる、東北や道南からやってくる労働者で、昭和三年の北海タイムスの新聞には、「ここ五六日の中に二万の神様 鰊の余市へ降りる そろそろ出てきた鰊気分」という記事があり、鰊漁のために余市駅に数日の間に2万人もの人がやってくるという騒ぎでした。(冒頭の絵は、集まってくるヤン衆のさし絵)

有名なソーラン節の歌詞は、

ヤーレン ソーラン ソーラン ソーラン ソーラン ソーラン(ハイハイ)

沖のカモメに 潮時問えば わたしゃ立つ鳥 波に聞け チョイ

ヤサ エ エンヤーサーノ ドッコイショ(ハー ドッコイショ ドッコイショ)

というものですが、実はこれは、ソーラン節がお座敷や舞台で歌われるようになってから定番化した歌詞で、鰊漁の現場を知る人はこれを「お座敷ソーラン」と呼んでいたそうです。

お座敷でない方のソーラン節は、戦場のような漁場で働くヤン衆を目覚めさせ働かせる歌なので、上品すぎてはかえって子守歌になって眠くなってしまいますから、実際はとうてい活字に残せないような歌詞も多かったのだとか。それでも活字に残っている比較的ソフトなものとしては、次のようなものがあります。

〽 オバコ オバコと言ってるうちゃよかった 今じゃ人のかか 気もやける

〽 あっけらぽん あっけらぽん あっけらぽんとすんな あっけらぽんとすりゃ かか盗まれる

きっと様々なバージョンがあったのでしょう。昨日書いたアズマリの刈り取り作業歌は戦場を模して作業に景気を付けていましたが、労働歌というのは、人が大勢集まって一気に何かを成し遂げる時に、人の興奮を呼び起こして力を出させる仕掛けなのでしょう。

次のソーラン節の動画は見つけた中では漁の現場の雰囲気を再現しようという工夫が見られたものですが、「正調ソーラン節」とアナウンスしているところがやはり人に聞かせられるちゃんとしたもので、正調でない、おおっぴらに聞かせられないようなソーラン節の動画は見つかりそうもありません。

https://youtu.be/4J7qMuP_BZ0?si=dTAOMN8l4_ihkoUn

 

参考 續北海道絵本 更科源蔵・大本靖 さろるん書房

余市町ホームページ  ほか

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