アトリエ一十舎楽器デモ演奏

1733年フロリダ沖スペイン沈船にあったルネサンスギター

この写真のギターは、1733年にアメリカフロリダ沖で沈んだスペイン船サンフェルナンド号のルサンスギター残骸(ネックと裏板が発見されて外形全体が判明した)の復元図面をもとに作成したものです。1733年と言えばルネサンス時代の次のバロック時代も終盤ですが、このギターは16世紀から18世紀までに製作されたルネサンスギターの特徴を備えたものと言われています。

ここフロリダ沖は様々な時代の船が重複して沈んでいる可能性がある海域のため、サンフェルナンド号にあったギターと断定するには厳密には年代測定が必要とのことなのですが、状況的にはサンフェルナンド号積載のギターと推測されています。そして研究者は、実際の製作年代を特定することはできないとしても、この遺物は、16世紀の資料から得られる4コースギター(ルネサンスギター)の情報すべてと整合しているとして、16世紀のギターであったとしても不思議ではないと結論づけています。(UNIVERSIDAD COMPLUTENSE DE MADRID 地歴学部音楽学専攻 ギターラの進化の知見の水中考古学の貢献 2014 Jesús Alonso Yllana Bajo la dirección de los doctores)

このスペイン船ギターの特徴は、次のような点があると思います。

①4つのコース全部が複弦で全8弦で構成されています。ルネサンスギターは第1コースだけを単弦にして全7弦で製作されるものも多いので、全コース複弦は特徴のひとつと言えます。

② ボディサイズがコンサートサイズウクレレとほぼ同じで、かなり小ぶりです。ルネサンスギターには様々な大きさのものが地域的歴史的に存在したようですが、このスペイン船ギターのコンパクトさは船に携行するのにぴったりの印象です。

③ ボディ長に比してネックがかなり長く、全体のコンパクトさと十分な弦長を両立させているようです。このギター残骸全体の各部の長さからすると弦長は450mmから475mmの範囲内くらいで製作することが可能で、14フレット付近をジョイントにして弦長を475mmにするとブリッジの位置のバランスがよかったので、そのように製作しました(多分実際にはフレット数は少なかったでしょうが…)。

④ ナット直近のネックの握り幅がおよそ35mmであったことがギター残骸からわかるのですが、これは現代のウクレレのネック幅と同じで、ルネサンスギターから現代へ継承されている流れが垣間見えます。大航海時代以降16世紀から19世紀にかけて、イベリア半島から4コースないし5コースの複弦又は単弦のギター類が世界に拡散して現在まで残っているのですが、そのようなつながりの中継点的な楽器として考察することもできるかもしれません。

⑤ 16世紀から18世紀のこの付近の海域は、スペイン、ポルトガル、イギリス、オランダ、フランスなど各国帆船が新大陸の物産を西欧に運び、帆船による海上交通が大規模に展開した時代でした。植民地向けの楽器や、船員の娯楽楽器、船内作業の効率化のために楽器などが、船に持ち込まれることす少なくなかったようです。

⑥ このギターが載せられていたスペイン沈船の詳細データはこちら→ 1733年ギターのスペイン船サンフェルナンド号 ニュースペイン艦隊

⑦このギターの試奏の音はこちら↓。演奏は岩田耕作先生(ハルモニー・セレスト音楽教室)

↓ 姫小松&榧 ナイルガット弦

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↓ 姫小松&榧 フロロカーボンの釣り糸弦

↓ マホガニー ナイルガット弦

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