あれこれいろいろ

音溜まり という現象から楽器を考えるの巻

壁が3方向から集まる部屋の隅は「音溜まり」になります。音波の反射が多く集まる部分です。起きているときに音は気にならなかったのに、寝ていると音が気になるという現象は、音溜まりに頭を近付けているときに起こります。

ギターやウクレレのボディは周囲が湾曲しているので隅に音溜まりは出来にくい形状です。ただ中央部がくびれて幅が狭くなっている部分は、通路が狭くなる分だけ音の反射が集中して音溜まり類似の状況になるので、そこに音孔を開けることで、集中した音を効率よく楽器の外に取り出そうとしているように思われます。

ヴァイオリンも中央のくびれて細くなるところ、しかもボディの隅の薄くなるところに寄せて音孔が開けてあり、これも反射が最も集中しやすい場所を選んであるように思われます。

馬頭琴はボディが四角く音溜まりができる構造です。穴の位置を見てみると、上に向かって細くなるボディの端の方によせて音孔が作ってあります。これはまさに音溜まりになる位置に音孔を作って、大きな音が取り出そうとしているのではないでしょうか。擦弦楽器でS字型の穴の形をしているところはヴァイオリンと基本が同じなのに、穴の位置だけ大きく異なるのは、ボディ形状の違いから反射が集中する場所が変わったことに基づいて、穴の位置が必然的に移動したということのように思われます。

ちなみに三味線や三線はボディに穴がなく閉じられた空間です。これは音を閉じ込めることで内部の反射を逃さないようにし(いわばボディの内部全体を音溜まりにするような発想に近いかもしれません)、そこに棹(ネック)を貫通させることで棹から音を外に取り出します。三線では「棹が鳴る」という表現をし、発音体になる棹の材質にこだわりが強く、三線の価値は棹で決まるというギターと異なる価値体系になるのは、音反射の集中のさせ方とその取り出し方の違いから生まれてきているように思われます。

 

 

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