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歌う宗教 カトリックの聖務日課とミサ

元来キリスト教はとても良く歌う宗教です。祈りが歌の形を取るからです。暦に従い、日に何度も、定式に従って歌い祈りながら一年を過ごすのです。その基本形は、『聖務日課』(修道院内で行われる日々の朗唱)と『ミサ』(日曜日ごとに教会を訪れる信徒と共に行われる聖体の秘跡の典礼)のふたつ。その内容は、グレゴリオ聖歌が始まったころは、概要次のようになっていました。

『聖務日課』※1…1日8回の時祷(朝課、讃歌、第一時課、第三時課、第六時課、第九時課、晩課、終課)において、詩編とカンティクム(聖書に出てくる賛歌のこと。マリアの賛歌・シメオンの賛歌・ザカリアの賛歌・旧約聖書から取られた14の小賛歌)を朗唱。また、受難週の最後の三日間は、朝課においてエレミヤの哀歌を朗唱。加えて、受難週には、各福音書(日曜日はマタイ福音書、火曜日マルコ、木曜日ルカ、金曜日ヨハネ)の受難物語を朗唱。

『ミサ』※2…ミサを構成する計18の部分のうち歌う部分が10あり、「入祭唱」「昇階唱」「アレルヤ唱」「奉納唱」「聖体拝領唱」の五つが固有文(その日のミサごとに固有の歌詞)で、「キリエ」「グローリア」「クレド」「サンクトゥス」「アニュスデイ」の五つが通常文(年間を通じて同じ歌詞)となっている。その他のミサとして、葬儀ミサ(レクイエム)や、様々祝日のミサなど。

※1 聖務日課とは、神への賛美を通して昼夜の全過程が奉献されるという目的で行われる毎日の祈り。聖務日課は元々聖職者や修道者が行うものという位置づけだったが、現在では典礼改革によって全信徒による祈りという位置づけに改められ、使用される言語もラテン語から各言語に拡大し、時課は朝晩ふたつに整理され、朝の祈りは朗唱でなく読書課としていつでも行えるように改められている。 聖務日課 ウイキペディア

※2 ミサは、キリストの生涯、特にその死と復活を思い起こし、キリストをとおして実現した救いの恵みに感謝し、パンとぶどう酒のしるしによってキリスト信者がキリストと一つに結ばれる秘跡(神のしるし)。 ミサ ウイキペディア

もっと細かなバリエーションや、時代による変化もありますが、キリスト教は古来歌うことと祈りが深く結びついていたことがわかると思います。

現在宗教に無関係のジャンルでも西洋の音楽は根源でキリスト教の歴史と結びついていると言えますし、西洋以外の音楽を考えるときも、比較対照先としてキリスト教の歴史が重要になります。キリスト教の典礼のイメージを持っておくことは、音楽の理解をひとつ深めてくれます。

カンティクム☟

ミサ(キリエ)☟

 

参考・キリスト教音楽の歴史 川端純四郎著 日本基督教団出版局

 

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