一十舎のウクレレの特徴

木が好き! が一十舎のはじまり

先日、古楽器奏者の岩田さんの生徒さんが、「楽器作りをする人は、楽器の演奏が好きで、それが高じて自分で作りはじめることになるのですか」という趣旨のことをおっしゃいました。

その質問を受けたときには、私の中には、木が好きもあれば、もの作りが好きもあれば、楽器が好きもあれば、演奏が好きもあるので、何が高じてウクレレ作りをはじめたのかわかりませんでした。ただ自然の流れで作ることになったということしかわかりませんでした。

ですが質問からだんだん時間がたってくるにつれて、「木が好き」が私の中で大きくクローズアップされてきたような気がします。

木が好きで、いろいろな木がみんな好きで、様々な木をみんな響かせて、それぞれの木の味わいを引き出したいというような気分が私の中にいつもあるようです。

昔、ある木工芸をしている人と話しているとき、「その木工芸は杉の木でもできますか」と私が聞いたところ、「杉なんて、あんなもの建築資材ですよ」という答えが返ってきてびっくりしたことがありました。木に向き不向きはあっても、高下や上下があるという感覚が私の中にはなかったので、想像もしない答えでした。杉の木が好きで質問をした私としては、少々心外な答えでもありました。

私の場合は杉の木を見ているとうっとりします。見て、触れて、匂いをかいで、重みを感じて、ああいいなあと思います。そしてこれを響かせたらどんな個性のあるすばらしい響きが出せるだろうと思います。杉以外のどんな木でも同じで、見て、触れて、匂いを嗅いで、重さを感じて、「ああ、いいなあ」とやはり思うんです。もし音を共鳴させるのに向かない材質なら、その木の色や感触や匂いなどを生かす取り入れ方は何かなと思います。

こんなですから、一十舎の作るウクレレは、いろんな木のオンパレードになります。そして他に類似品のないものに仕上がります。様々な木が使われて、木と木が織りなすハーモニーみたいになってきます。

というわけで、木が好きが中心にあるというのが一十舎のウクレレの特徴を自然に形作っているようで、そこから誰も試したことのない新しい音色も生まれてきます。

木が好きが核になって、そこにものつくりが好きと楽器が好きと演奏が好きとほかにもいろんな好きがブレンドされてできあがってくるのが一十舎のウクレレのようです。