ルネサンスギター

ルネサンスギターの古いエピソード セレナーデ悪用事件(゚д゚)! Guitarra renascentista

ルネサンスギターをスペイン語の綴りにして Guitarra renascentista と入力して検索してみたところ、次のような史実が出てきました。

1459年にリスボンの裁判所長官が、あるギタリストの無意味なセレナーデを止めさせるために、非常に具体的な措置を取らなければならなかった。「ギターを持った10人の男が集まり、3、4人が演奏したり歌ったりしている間に、他の男たちは家に上がり込んで泥棒をする。娘やメイドがギター演奏を聞くとドアを開けてギタリストたちと寝るのだが、彼らが帰るときには必ず何か持っていく」。このことから、「門限がある場所では門限後、それ以外の場所では夜9時以降から日の出後まで、松明や照明でパーティーや結婚式を祝っていない市町村や公共の場でギターを持っているところを発見されたギタリストは投獄され、ギター、武器、着ていた服も失う」という決定を下した。

セレナーデ悪用事件という呆れた話ですが、このエピソードから色々想像がふくらみます。

この話を前提にすると、ルネサンスギターは15世紀の半ばにはポルトガル庶民に広く普及していたことになります。ここで見えてくるのは王室や教会の高級な楽器というより、かなり庶民的な楽器の風景です。それも農村でなく都市型の楽器の風景です。窓下のセレナーデが男女間のやりとりに当たり前に行われていた雰囲気からすると、当時の若い男女にとってルネサンスギターは先端的でおしゃれな楽器だった可能性がありそうです。だからこそ悪用事件も起きるのでしょう。規制に違反して捕まるとギターと武器と服を没収というところなど、今であれば車とスマホと流行りファッションの没収という感じでしょうか。男たちが女性の気を引くための必須アイテムを取り上げてしまおうということなのでしょう。パーティーや結婚式での夜のギターはOKということなので、当時の社会にギターが健全に使用されていた側面も見えます。流行が加熱すると犯罪と結び付き規制の対象になるのは古今東西変わらぬ現象なのでしよう。そのような流行りものの問題は、熱が冷めれば早晩消滅する運命なのか、それとも一過性に終わらずに核心が残っていくのかですが、答えはどちらとも言えそうです。18世紀頃以降ルネサンスギターは廃れてしまったとも言えるし、そのものが消えても、後の現代ギターや世界に広がるウクレレやカバキーニョなど各種小型ギターに形を変えて繋がっていったと見ることもできます。

何はともあれ、庶民的な楽器に興味がある私には非常に面白いエピソードでした。(^_^)

なお冒頭の絵は、セバスチャンフェルナンデスの「悲劇のポリシアーナ」のイラスト(1547年)です。こんなふうに窓下で男がセレナーデを奏でて女を誘うというのは、当時の若者にとっては男の見せ所だったとすると、女性の気を引くために楽器と歌の練習はいけてる男のたしなみだったかもしれません。異性の気を引くためというのは、楽器が人々に浸透する入口としては案外大きな要素です。この時代はスペインやポルトガルの若者たちは、アジア、アメリカ、アフリカへと一攫千金を夢見て大挙して海を渡って行った大航海時代ですから、その男たちに楽器を弾く文化があったということは、世界へ楽器の広がっていく要因のひとつだった可能性もありそうです。

RELATED POST