あれこれいろいろ

ボディシェアリングから考える音楽2

ボディシェアリングの話の続きですが、ボディシェアリングと音楽の可能性として、音楽保存の面も見落とせません。

ボディシェアリングでは手仕事に関する技術や感覚をデータ化して残すことができます。これまで個の中に閉じて、個の死によって失われていた卓越した身体感覚を、網羅的に保存し、だれでもいつでも自身の身体に再現して体験することができることになります。

世界の歴史に残る名演奏家の指使いや力の入れ方や方向性や体からにじみ出るリズムなどの感覚がそのまま保存され誰もが体験できることが音楽の未来に与えるインパクトは大きいのではないでしょうか。上の写真はカザルスですが、カザルスのある曲を演奏するときの体の動きがデータ化されて、カザルスの身体と同一化してそれを体験できたら、音楽を学ぶ者にとって衝撃的な体験になるはずです。

演奏と同時に消えてしまうという音楽の宿命にあらがって楽譜が生まれ、録音技術が生まれ、ビデオで演奏姿を残すことができるようになりましたが、とうとう演奏体験自体を残す時代が訪れようとしています。これは人間の技術の保存として究極の進化に近づいているかもしれません。