アラブやトルコや中央アジアなどの音楽を知りたいと思っているのですが、そもそもアジアのイメージがインドから向こうになると急にあやふやになって、アラブ、ペルシャ、トルコなどはいっしょくた。
しかし実は、アラブとトルコとペルシャは全然別で、欧米人が中国と韓国と日本をいっしょくたにしているのと同じあやまちを、われわれ日本人はアラブ、ペルシャ、トルコでやっているようです。
まずはアラブ諸国からおさえておきますと、アラブ諸国の地図がこちら。アラブ諸国とは、アフロ・アジア語族(セム・ハム語族ともいう)のアラビア語を話すアラブ人が暮らす国々で、イラクからエジプトまでをマシュリク(太陽が昇るところ)、リビアからモロッコまでをマグリブ(太陽が没するところ)と言います。想像以上にアフリカ方面が広いのですね。
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次にペルシャはこちら。インド・ヨーロッパ語族のペルシア語を話すイラン系民族が住んでおり、要するに現代ではぼイランです。イランはアラブではなかったというのに驚かれる方も多いことでしょう。イラクとイランは全然別だったのです。
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そしてトルコがこちら。モンゴロイド系言語であるアルタイ諸語テュルク語族のトルコ語を話すテュルク系民族が住む地域。歴史的に中央アジア遊牧民のモンゴロイド(突厥など)の血が入っているそうです。
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細かく調べれば遺伝子、言語、宗教、歴史が入り組んでいて複雑なんですが、要するにアラビア語はアラビア半島からアフリカ方面と広く関係がありますし、トルコ語はモンゴロイドの方ですし、ペルシア語はインド・ヨーロッパの方で、出自がそれぞれ別方向。そして、それらが互いに征服したり征服されたりして混ざりながら、それぞれ独自性も残しているわけです。大ざっぱにいうと、ペルシャ系王朝の支配期→アラブ系王朝の支配期→トルコ系王朝の支配期という大きなうねりがありつつ、古代宗教とイスラム教の対立、イスラム教スンナ派とシーア派の対立、アジアからは元に攻められヨーロッパからは十字軍がやってくるなどの諸要素が、この地域の歴史を彩っていきます。
さらに、コーカサス(アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアなど)と中央アジア(カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン)も忘れてはいけません。ペルシア、トルコ、アラブ、ヨーロッパ、元、ソ連などの影響を次々に受けながら歴史を紡いでいる地域。
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という大まかな知識を前提にして、これらの地域の音楽の共通性と独自性に注目していきたいと思っています。