ウクレレ豆話

マデイラ島の5弦楽器 Rajão ラジャン

ウクレレの起源としてマデイラ島のブラギーニャのことを書いてきましたが、実はあと2種のマデイラ島固有のギターがあります。ラジャン(Rajão)とヴィオラ・ダラメ(Viola d’Arame)です。

今回はRajãoのことを書きます。英語読みならラジャオですが、ポルトガル語ではラジョンとラジャンの中間のような発音です。ここではラジャンで統一します。

ブラギーニャは4弦でしたが、ラジャンは5弦ギターです。マデイラ島の古い写真又は絵を集めてみました。

1890年ころ☟ 同じスタジオで撮影か

☟年代不明

☟1960年

☟これらもラジャンの絵として紹介されているようです。

このようにブラギーニャに劣らずラジャンも広く弾かれていた様子です。ブラギーニャより二回りくらい大きく、ブラギーニャの写真や絵では女性と子供が楽器を持つ構図が多かったのに対し、ラジャンは全部男性なのが特徴的です。

カルロス・サントスという人が、著書「Tocares e Cantares da Ilha」の中で、ラジャンは卓越した伴奏楽器で、地域のオーケストラで大きな役割を果たしており、また農民にとって欠かすことのできない遊び相手で、どんなリズムにも簡単に伴う」と紹介してるそうです。

調弦は上からdgceaで、要するに現在のウクレレのgceaの上にdを付け足した形です。☟

マデイラ専門芸術音楽院のマデイラコルドフォンの教授は、ラジャンについて次のように説明しています。「ラジャンはマデイラの音楽活動で使用されるすべての楽器の中でおそらくその起源が最も地域的であり、少なくとも17世紀以来歴史的にこの地域に関連付けることができるより古風な特徴を持っている。それはマデイラの農村地域に大きな影響を与え、さまざまな音楽のリズムに従うことができたことに由来している。3弦が最も厳しいリエントラントチューニングは、16世紀のハンドヴィオラの典型(ポルトガル語ではギターをヴィオラという)で、その特徴は、16世紀後半から使用されている「viola requintada」と非常によく似ている」

さて、このラジャンはハワイに来たのかどうなんですが、先日も紹介したこちらの写真を見ると、ブラギーニャとほぼ同時ころにハワイに来たように考えられます。

ウクレレと並んでラジャンのハワイ型5弦ギターを製作して普及させようとしたようです。ハワイ州観光局のアロハプログラムというサイトには、「移民たちの中から家具職人たちが楽器の生産も始めます。5本の弦を持つ小型ギターはタロパッチ・ギターと呼ばれ、さらに小さな4本弦の楽器がウクレレと名付けられ、ハワイで作られ販売されるようになりました」と解説されています。

なお、このラジャンは1897年頃にハワイ以外にも特に北アフリカ地域に大量に輸出されたそうです。

今はハワイの楽器と言えば4弦のウクレレで5弦は普及してないですが、マデイラ島では現在も5弦のラジャンがさかんに弾かれていて地元の祭りなどではごく普通の人たちの庶民的な楽器として活躍しているようです。☟

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