大げさなタイトルになりましたが…答えをいきなり言いますと、それは
「音楽演奏を家の中に入れることができる」
ということだと思うのです。
楽器は、演奏する場所に応じて変化してきました。ある時代は教会での演奏に適応し、ある時代は王宮や宮廷での演奏に適応し、ある時代は大ホールでの演奏に適応してきました。それらに共通して言えることは、大きな空間に適応しようと変化してきたのが楽器の一般的な進化でした。大音量と音の遠達性が最高の楽器として認められる重要なポイントでした。
しかし視点を転じると、それは家庭という小空間での演奏能力の喪失とも言えます。家族や友人と寛ぐ小空間を音がはみ出してしまいます。
実は家庭に音が入る楽器というのも大きな能力だと思うのです。それぞれの家に楽器があって、折に触れて家の中に音楽演奏をもたらせるというのも、楽器の最高形態のひとつだと思います。オーケストラの一員になったり、コンサートで人々を熱狂させることだけが楽器の全てではありません。
ウクレレとルネサンスギターは、小空間での演奏能力を維持しています。ルネサンスギターは、16世紀当時から庶民のギターの位置にあって、あらゆるギターの祖先として最も素朴な形を残しています。小空間での演奏能力を豊かに持っています。ウクレレは、そんなルネサンスギターの子孫として、ポルトガル領マデイラ島の民族楽器からハワイの民族楽器に転化し、人々の生活に密着する民族楽器として素朴さや簡易さに一層磨きをかけています。
家の中に入ることができるのは、素晴らしいことです。
彼氏や彼女と、おしゃれをして外で会って遊ぶのもトキメキがありますが、家の中に互いを招き入れて時を共にするようになったら、そこから愛は新たな段階に入るわけで、家の中に音楽演奏が入るというのも、楽器にとってしあわせな新段階のような気がします。
ウクレレやルネサンスギターが家の壁にかかっている風景は、いつもそこにある平和を感じさせます。コンサートで聞く一流演奏とは異なる局面の音楽の豊かさが鳴り響きます。そこには一流も二流も三流もなく、手に取って鳴らした瞬間にひろがる自分だけの音楽世界です。そんな音楽世界を作り出す能力を維持している楽器、それがウクレレやルネサンスギターだと思います。