「僕達はアラブ音楽のことを何も知らない」って題名を思い付いたのですが、小説のタイトルになりそうでちょっとカッコよくないですか?
実際ぼくたちはびっくりするくらいアラブ音楽のことを何も知りません。何となくアラブっぽいメロディの雰囲気を思い描くのが精いっぱいで、その内容も人それぞれバラバラなのかも。
アラブ音楽は少なく見つもっても西暦800年頃から現在まで1200年以上に及ぶ歴史があり、もっとさかのぼれば、シュメール、アッカド、フェニキア、アッシリア、ペルシアなどの古代文明や古代ギリシャの音楽理論にも繋がり、数千年にわたる人類史の中心的な音楽のひとつであり続けているのです。地域的に見ても北アフリカから中東まで非常に広範囲の国々に行き渡る上、コーカサス・中央アジアなどのアラブ以外の音楽文化にも混然と繋がっていく巨大な音楽潮流です。それなのに本当に僕達はアラブ音楽のことを何も知らない…
日本では義務教育の音楽の時間にアラブ音楽が出てくることはほとんどないでしょう。日本の古典すら脇に押しやられているくらいですから、アラブ音楽が出てくるはずもないとも言えます。
でも実はこれはかなり不思議で奇妙なことかも、という気付きは、結構大切な気付きのように思えます。当たり前と思っている私達の音楽観は、とても制限された思い込みの中にいつの間にか閉じ込められていたのかも。
ということで、閉じ込められていた音楽観をぐっと広げる手始めに、アラブ音楽のことを知ってみるというのは、なかなか良いアイデアではないかと思うわけです。で、私が読んで、アラブ音楽の概要を知るのに参考になった次の二冊をご紹介。
一冊目は、「アラブの音文化」 西尾哲夫ほか編 株式会社スタイルノート
この本は多くの研究者の共著で、さまざまな観点からアラブ音楽を知ることができるので、アラブ音楽の多様な展開とその中に共通する理論などがわかり、とても参考になりました。
二冊目は、「アラブ音楽入門」 飯野りさ著 株式会社スタイルノート
この本では、サンプル録音を聞きながら読めるので、アラブ音楽を聞くコツがわかり、アラブ音楽を楽しむ具体的な手引きが得られます。
ps 偶然にもどっちもスタイルノートという会社から出ている本でした。この会社のHPを見てみると、グルジア民謡概説なんて本があるかと思えば、AI音楽の本もあり、結構個性的な出版社みたい。色々楽しい本が見つかりそうです。