あれこれいろいろ

A=440Hzばかりじゃない、いろんな音律

現代の音律はA=440Hzで標準化されています。これが決まったのは1955年のことで音楽の歴史の中ではつい最近のこと。それ以前の歴史では、実に様々な音律が用いられてきました。その代表的な例はつぎのとおり。

15~16世紀 ルネサンス時代 北イタリア 器楽466Hz 声楽415Hz

17~18世紀 バロックピッチ 415Hz

17~18世紀 ルイ14世の宮廷楽団 404~408Hz

18世紀 バロック後期 ベルサイユピッチ 392Hz

18世紀 ヘンデルの音叉 422.5Hz

18世紀 モーツァルトピッチ 422Hz

18~19世紀 古典派ピッチ 430Hz

1859年 フランス政府制定のピッチ 435Hz

19世紀 ヴェルディのピッチ 432Hz

1884年 イタリア政府のピッチ 432Hz

1885年 オーストリア政府のピッチ 435Hz

19世紀後半 ミラノスカラ座 452Hz

1925年 アメリカ政府のピッチ 440Hz

1939年  ロンドン国際会議によるピッチ 440Hz

1955年 ISO制定の国際基準 440Hz

20世紀 シュタイナー音楽のピッチ 432Hz

20世紀 カラヤンチューニング 446Hz

1968年 日本の雅楽の黄鐘(=A)の基準 430Hz

現在 ウィーン交響楽団、ベルリン交響楽団など 444~448Hz

現在 ピアノのチューニング 442Hz

このように、実に様々。これらは各時代の一例で、地域ごと楽器種類ごと楽団ごとなど、色んなピッチが存在したわけです。

ちなみに、現代のA=440Hzから見ると、バロックピッチの415Hzは半音下げ、ルネサンス時代のの北イタリア器楽の466Hzは半音上げ、ベルサイユピッチの392Hzは一音上げ、そのほか430Hz、432Hz、435Hzなどは、4分の1音も下がらないくらいの微妙な下げ、という感じです。

日本の雅楽の十二律は、壱越≒D、断金≒D♯、平調≒E、勝絶≒F、下無≒F♯、双調≒G、鳧鐘≒G♯、黄鐘≒A、鸞鏡≒A♯、盤渉≒B、神仙≒C、上無≒C♯ですが、この中のAに相当する黄鐘(おうしき)を430Hzに統一することにしたのが1968年で、これも雅楽の歴史の中ではごく最近のこと。このピッチを定めた後、これが台湾の孔子廟で演奏されている音楽のピッチと偶然にも一致することが判明し、台湾の専門家にその由来を聞いてみると、台湾の孔子廟のピッチは中国の宋の時代のピッチを踏襲し、宋の時代のピッチは唐の時代のピッチを受け継いでいるという話であったとか。

 

RELATED POST