上の図は、教会の音響と寺院の音響を比較した例です。赤い色が、最初の発信音→初期反射音→残響へと順次音が弱まっていく様子を表わしていて、青い色が、教会と寺院それぞれでの、音の響き方を表しています。
音の響き方のちがいに目を見張りますね。特に教会での残響の大きさと長さは驚くばかり。特筆すべきは、最初の発信音よりも初期反射音の方が大きく、残響音すら最初の発信音を超える部分もあるということ。対照的に寺院の場合は、大きいのは最初の発信音だけで、音の反射はほとんどなく、一瞬で音が減衰してしまいます。
この図はこちらの動画から引用したもので、教会と寺院の場所や構造などはわかりません。
https://youtu.be/Epph9iUobrQ?si=mFvyiawvBNVY6Zab
詳細なデータはわかりませんが、一般論的に言えそうなことは、やはり西洋の教会が石やレンガなどの堅固な硬い閉鎖状の構造物であるため音が響きやすく、日本の寺院は木造で柔らかい開放状の構造物であるために音が消えやすいということでしょう。そのため西洋の教会は、神父の説教の声が荘厳に隅々までよく聞こえ、オルガンや宗教的な歌声が天の楽のように鳴り渡るように進化を遂げ、日本の寺院は、例えば座禅の警策の音がピシッと一瞬に響いて消えて居住まいを正したり、「喝!」と言った後には沈黙が広がるという、瞬間に祓うような方向で進化を遂げたように思われます。
現代までのあらゆる西洋音楽は教会音楽の歴史と何かしら関係があるわけで、その流れの大筋は教会の音響構造からの必然のようにも思われます。日本の現代の音楽は、明治以降、西洋音楽からの影響を大きく受けているわけですが、その中に残る日本的な特徴は、寺院構造からの帰結がやはり含まれているのでしょうか。