あれこれいろいろ

クモの糸の弦

奈良県立医大名誉教授の大崎茂芳(しげよし)氏が、クモの糸を集めて作ったヴァイオリンの弦が、非常に良いという話です。

クモは、巣の骨格となる「縦糸」、粘着性のある「横糸」など、7種類の糸を出しますが、使えるのはクモが逃げ出すときに使う命綱の糸だけで、命綱を吐き出しながら落ちていくクモから糸を巻き取って採集します。弦1本あたり1万5000本のオオジョロウグモの糸が使われます。

クモの糸は柔軟で強く、最高250度まで溶けない耐熱性、撚り合わせると繊維同士がぴったりとくっつき隙間がなくなって切れにくい、紫外線を浴びると強くなるなどの性質があるのだとか。

クモの糸のヴァイオリンを専門家に弾いてもらったところ、「柔らかくて深みのあるとてもいい音。倍音が多く、ストラディバリウスと比較しても遜色ない」という評価が得られ、周波数解析でもストラディバリの音色と比べても遜色がなく、日本オーディオ協会前理事の森芳久氏は、「初めて聴いたクモ糸の弦のものすごく大きな音は忘れられない。すばらしいの一言」と絶賛した実力だそうです。

糸を集めるのが大変なので量産できず、遺伝子工学によって作るクモの糸はまだ天然ものに及ばないそうですが、今後期待の新素材。

クモの糸のヴァイオリンの音の動画は見つけられませんでしたが、クモの糸の弦を手作りしてギターに張ってみたという動画がありました。☟

元々楽器の弦は身近な自然素材から取るのが普通でした。ガット弦は羊や牛の腸、三味線や琴は蚕からとった絹糸、アイヌのトンコリは鯨の腱や草木の繊維、馬頭琴の弓は馬の毛など。ここにクモの糸が加わると楽しいですね。

クモの糸の弦で天上の音楽を聞かせながらクモの糸を垂らしてやれば、地獄のカンダタも途中で悪い心を起こすことなく、天国にすくいとることができたでしょうか。

参考

https://www.7midori.org/katsudo/kouhou/kaze_archive/miserarete/56/index.html

https://www.sankei.com/article/20160225-JMJGXISUWZJGZGPK466GZHR4VU/

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