ここ数日、試作中のルネサンスギター各種にいろんな弦を張ったり外したりの実験を繰り返しています。
アクイラのナイルガットとキルシュナーのガット弦について、それぞれ二種類のゲージの組み合わせがよさそうだというところまで岩田さんが絞り込んでくれましたので、私は実際に作る様々なボディのルネサンスギターとの組み合わせの相性を確認していたのです。
ナイルガットはガット弦と比重を同じくしてガットの音に近づけたナイロン弦ですが、こうして張り比べてみると本物のガット弦とはやはりかなりちがうようです。ナイルガットはよく響きますが、ちょっと音がギラつく気がします。しかしボディとの組み合わせ次第では、ギラギラがキラキラに昇華して、非常によい響きになることがあります。キルシュナーのガット弦のDLという種類のものは、ナイルガットに比べると音は少し控えめになることが多いですが、とても繊細で素直で心地よいバランスのよい音がします。これもボディとの組み合わせ次第ですが、これぞ古楽器の美しさという華麗絢爛な音になることがあります。ボディとの組み合わせが悪いと、もう全然鳴らないみたいな感じになったりもします。
ゲージの選択もかなり難しいです。ギター一本ごとによく鳴るゲージがかなり異なるので、どこまで一般化標準化することができるのか迷うところです。
ほかにも、フロロカーボンやナイロン素材のものもいろいろ試したのですが、ルネサンスギターに合うものは見つけることができませんでしたので、フロロとナイロンはあきらめました。結局、一番いいのは、古楽器弦の本来の素材であるガット弦のようです。ナイルガットも時にいい仕事をするので、控えの二番手としてベンチにはいてほしいみたいな感じです。
それにしても、こうしていろいろ試したものについて、岩田さんのプロの意見を聞いて再確認できるというのは大きなことです。F1レーサーの走行試験と意見をもとにメカニックがチューンナップしてマシンを仕上げていくみたいなことができるのは、とてもありがたいです。こういうフィードバックの循環ができるかできないかで、開発に要する時間も到達レベルも全く異なってくるのだろうと思います。