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ネアンデルタール人は音楽を持っていたのか 

ネアンデルタール人と聞くと、半分猿のような姿を想像しがちですが、冒頭の写真はチューリッヒ大学で復元されたネアンデルタール人の少女。現代の服を着て町中を歩けば、さほど違和感はないでしょう。現代の人類の祖先であるホモ・サピエンスよりも、体力も知力も上回っていたのではないかとも言われています。

ネアンデルタール人とホモ・サピエンスはある時点までは同時に地球上に存在して、それぞれが言葉を話し、道具(石器)を作り、火を使い、相互扶助的な社会を築き、相互に交雑も起きていました。ところが7万年前になると、ホモ・サピエンスが東アフリカから世界に向けて拡大しはじめ、すると、ホモ・サピエンスが到達した地域で、ネアンデルタール人は次第に追われて絶滅していきました。ネアンデルタール人のほかにも、デニソワ人などの様々な人類種で同じことが起き、1万3000年前、地球上にはホモ・サピエンスしかいなくなりました。またホモ・サピエンスが到達した地域では、オーストラリア大陸でもアメリカ大陸でも、大型動物相の絶滅ということも起きました。

ホモ・サピエンスがこのように地球上の生物に対し圧倒的な力を持つようになった原因は、7万年前に、ホモ・サピエンスに認知革命が起きたからだそうです。その認知革命の内容を一言で要約すれば、「虚構を作る」ことができるようになったということ。

目の前にない虚構の物語を作って伝達することができる能力を得て、人類ははじめて、噂話が可能になり、様々な伝説、神話、宗教を作りはじめ、会ったことがない人と社会的ネットワークや大集団を作ったり、シンボルを信じて行動したり、大規模な組織・制度・規範を作って従ったりということができるようになりました。お金、人権、法律、正義などの現代の観念も、このホモ・サピエンスが獲得した虚構の想像力の上に建てられています。

ネアンデルタール人は、周辺の見知った人と協力し合うことはできましたが、ホモ・サピエンスのように虚構の物語で見知らぬ人と大集団で行動することができず、大挙して押し寄せるホモ・サピエンスに対して成すすべがなく絶滅していったわけです。

ここでようやく音楽の話に入りますが、7万年前に認知革命を果たしたホモ・サピエンスが、4万年前の段階で、ドイツ南部のホーレ・フェルス洞窟遺跡でハゲワシの骨で作ったフルートを持っていたことはわかっています(次の写真)。

では認知革命を経ていないネアンデルタール人には、果たして音楽を持っていたのか。6万年前(4万3000年前という記載も見られる)にネアンデルタール人が作った笛ではないかと言われているホラアナグマの骨がスロベニアで発掘されているのですが(下の写真)、これはハイエナの歯の痕跡であると結論付ける研究がなされており、ネアンデルタール人の楽器の動かなぬ証拠とまでは言えないようです。

虚構を作るという認知革命を経ていないネアンデルタール人は、果たして音楽を持ち得たのか、そこがこれから考えたいところなのですが、長くなったのでまた次回。(#^.^#)

参考 サピエンス全史 ユヴァール・ノア・ハラリ著

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