作レレ

指板にニスを塗るか塗らないか問題

世の中には、考えたこともないような問題がいろいろ生まれるようでして…
「スイカに塩をかけるかかけないか問題」とか、
「靴下は上下どっちを挟んで干すか問題」とか、
まあどっちでもよいような問題があちこちで生起するわけですが、
そのひとつとして、
「指板にニスを塗るか塗らないか問題」がこの世界の片隅に存在します。

市販のウクレレやギターには、ニスを塗っているものもあれば、塗っていないものもあるようです。

なぜウクレレの他の部位は必ず塗装をするのに指板だけは何も塗らないことがあるかというと、おそらく、弦が何回も当たってこすれるうちに、一部だけが剥げて来てみっともないということと、指板は硬い木を使うので、ニスで保護してやらなくても表面がわりと頑丈だということと、このふたつの理由なのかなと思います。

ところが世の中にはメープル指板という白い指板がありまして、これはニスを塗るのが普通のようです。その理由はおそらく、白い指板はだんだん指の跡が黒く付いてきて汚いということと、メープルは他の黒系の指板に比べと柔らかめなので保護してやる必要性があるということと、この二つの理由によるのかなと思います。

どちらもそれなりに理由のあって、なるほどという感じなのですが、ニスを塗った白い指板が世の中に存在しますと、その必然の結果として、弾きこんでくるうちに弦が触れて一部だけニスが剥げてしまった指板というのが世の中に生まれてくるわけです。そうすると世の中にはまた新たな動きがでまして、新価値観が生まれてきたようです。それは、

「弾きこんでハゲた指板がカッケー。このエイジド感にしびれちゃう」という価値観なのです。

こんな楽器を持っている人はもしかしてプロかも…とか
そんなに弾きこんで、きっと最高にいい楽器なんだ…とか
もしかしてビンテージもののスゲー楽器かも…とか
ここまで弾きこんだオレをほめてやりたい…とか
もうこのハゲハゲまでも愛おしい…とか

剥げた指板がウクレレやギターを取り囲む人々の脳裏にいろんな思いを呼び起こすことになりまして、指板を修理に出すときでも、この剥げたニスだけは絶対に直さないでほしいという人も珍しくないサッコンになったようです。

このように価値観が多様化してまいりますと、ニスを塗るか塗らないか問題にもひとつの結論が出たように思われます。

「どっちでもよい」

というということでおあとがよろしいかと思うんですが、いかがでしょうか。

一十舎としては、白い指板には汚れが目立たないようにニスを必ず塗ることにしています。それ以外の黒檀や紫檀の指板では、木目を見て、木の堅さを見て、どちらの方がより美しいかを考えて決めています。

(^^)/

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