楽譜を生成するときは、「春の出会いのイメージの曲の楽譜を作って」とか「ハ長調で三拍子でウクレレ初心者にも弾きやすい曲の楽譜を作って」などと、言語による指示で生成を開始するのが普通です。そして、生成されてきた楽譜をもとに、さらに言語により、「少し長すぎるので3分の2くらいの長さにして」とか「終わりが陳腐なので意外さを加えて余韻を持たせたい」など修正指示を加えて、壁打ちを重ねながら、好みの曲になるまでAIと対話することになります。
でも、実は、AIとの対話チャンネルは、言語だけに限りません。たとえば、写真を添付して「この写真のイメージの楽譜を作って」とか、録音音源を添付して「この曲をさらに壮大にして」とか、動画を添付して「この動画の主人公の終盤の気持ちを表現して」など、様々な入口があり得ます。
AIと対話するチャンネルには具体的には次のようなものが考えられます。AIの種類によって全部が利用できるわけではないですが、これらの複数を併用することによって、AIへの伝達にバリエーションを持たせることが可能です。
① 言語 文章や会話や詩や比喩などの言語により、曲の意図や構成や感情や時代背景などを伝える。
② 音声・歌唱 ハミングや歌声などを直接AIに音声入力して、旋律や速さや抑揚などを伝える。
③ 楽器演奏 ピアノ、ウクレレなどの録音を添付して、 奏法やテンポや旋律や音色や強弱などを伝える。
④ 楽譜 五線譜やTAB譜や手書き譜を添付して、旋律や和声や構造などを伝える。
⑤ 音楽データ MIDIやMusicXMLなどの音楽データを添付して、音楽データの精密な指定を伝える。
⑥ 既存の参考曲・演奏 参考となる有名な楽譜や演奏録音を添付して、様式や編曲や雰囲気などを伝える。
⑦ 絵画・写真 風景画や人物画や抽象画などを添付して、色彩感、時代感、感情的などのイメージを伝える。
⑧ 動画 映画や舞踊や風景動画を添付して、動きや時間の流れや場面の変化などを伝える。
⑨ 身体表現 指揮や身振りやダンスを撮影して、躍動や間合いなどを伝える。
⑩ 環境音 雨風や街の音や雑音などを添付して、音響的素材や空間の雰囲気やリズム感などを伝える。
⑪ 数値・図形 グラフや曲線やテンポ変化図などを添付して、曲の強弱や密度や速度や音域などの推移を伝える。
以上のほかにもありえますが、これらを使い分けることで、生成される楽譜を自分のイメージに近づけていくことが可能です。しかし、例えば、草の揺れる草原の動画を添付して、「このようなイメージに近づけて」と修正指示した場合、壮大な広がりのイメージが加わってくるかもしれないし、誰もいない草原の寂しさみたいなイメージになってくるかもしれず、自分のイメージから離れていくことも少なくないでしょう。
その場合、さらに言葉で補足して再修正を試みることもできるし、これも面白いと思って受け入れることもできます。なかなかうまくいかなくてやっぱりAIは使えないなと感じる人もいあれば、創造の幅が広がったと感じる人もいるでしょう。自分のイメージの正確な伝達を重視するか、対話の中から生まれる思いがけないイメージの広がりを重視するかによって、AIの使い方は人それぞれになってきます。そのやりとりの機微は、人間との共同創作に近いものがあるように感じます。
おそらく今後、そのような多様な体験が積み重なって、AIとの対立的な疑念の視点がしばらく続いたのち、AIとの共同創作という関係性の模索へと、時代は進んでいくのではないかと推測しています。
