ウクレレの魅力

ショパンコンクールの話 ファツィオリのピアノ

昨晩、YouTubeで、ショパンコンクールに参加するピアノメーカーとその調律師たちのドキュメンタリーを見ました。ピアノメーカー四社がそれぞれに仕上げたピアノをコンクールに提供して、78名のピアニストたちがコンクール前に二日かけて試奏し好みのピアノを選んでコンクールに臨むのですが、ピアノメーカーは、どれだけ多くのピアニストに選んでもらえるか、そしてどのくらい好成績を残してもらえるかに情熱を傾けるという話です。非常に興味深い番組でした。こちらです。

もうひとつのショパンコンクール

主として、イタリアの新興メーカー、ファツィオリの日本人調律師に焦点を当てて密着していたのですが、このファツィオリの調律師は、ショパンの曲に最も合う調律として、非常にやわらかく鳴るピアノに仕上げます。しかしコンクールにのぞむピアニストたちは、誰一人ファツィオリを選んでくれません。スタインウェイ、ヤマハ、カワイなど、華やかに強く鳴るように仕上げたピアノを選んでいくのです。ファツィオリの調律師は、悩んだ末に、二日目は方針を変更して、はなやかによく鳴るように調律しなおし、ようやくひとりのピアニストに選んでもらうことができます。コンクール参加ピアニストからすれば、審査員に少しでも印象を強く残したいわけですから、華やかに鳴る方を選ぶのは、ある意味当然のことでしょう。

私がこのブログに時々書いていることと、よく似た話だなあと思いました。楽器が、コンクール、演奏会、コンサートなど、大勢の聴衆に聞かせるものになっていくにつれ、楽器は華やかによく鳴るものだけが残るようになり、優しく柔らかく鳴る楽器は選択から外されて行き、やがて消滅していくのだと思います。

それほど華やかに大きくなる楽器ではないウクレレがなぜ消滅しなかったかと言えば、ハワイの民族楽器として、土着の生活に寄り添う楽器だったからだと思います。ハワイには、コンクール、コンサート目線が生まれないで済んだのです。

最近は、ウクレレの優しい素朴な音色が見直されて、世界にウクレレが広まるようになりました。しかし、それにつれて、ウクレレがコンクールやコンサートに使われるようになっています。大音量、派手なパフォーマンス、超絶技巧のウクレレ奏者がとても多くなってきており、コンクール、コンサート目線が強くなる中で、ウクレレから、やさしさ、やわらかさの音色が消えていくことになったら残念です。

一十舎では、華やかに派手に鳴る楽器であることより前に、やさしさやわらかさの音を第一選択としてウクレレを作っていきたいとおもっています。

 

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