AIと音楽

AIによる音楽評価 AIが得意な領域

前回書いたAIによる楽譜評価を読むと、中程度の思考量の設定でも、かなり中身のある分析が出てくることがわかります。SNSの口コミなど、その場限りの感情を投げかけてくるのに比べると、AIの分析は、客観性、論理性、中立性があって、内容がはるかに充実しています。

この実験で私がAIに投げかけた問いは、「この楽譜を音楽的にどう評価しますか」という大ざっぱなものでしたが、こういう問い方よりも、聞きたいことをもっと明確化して、AIが得意な分野に絞って言語化すれば、分析は一層深くなります。

では、AIは、どんな分析が得意なのでしょうか。AIに聞いたら、次のようなことが得意だと自分で言っています。(内容は人間の私が適宜要約しました)

・音楽の構造を分析すること
– 和声分析:コード進行、調性、転調、不協和音とその解決
– 旋律分析:音の上昇・下降、反復、変形、音域、特徴的な音程関係
– リズム分析:拍子、アクセント、シンコペーション、周期性
– 形式分析:楽曲全体の構成、主題の反復、対比、展開
– 対位法分析:複数の旋律の模倣、独立性、相互関係

・大量の楽曲を比較して、共通点や法則性を発見すること
例えば、ある時代と地域の楽曲を大量に分析して、次のようなことを発見します。
– どんな旋律進行が多いのか。
– どんな終止形が使われているのか。
– 地域や時代によってリズムがどう異なるのか。
– 同じ旋律が別の曲に変形されて現れていないか。
– 特定の作曲家だけに見られる特徴があるか。

・人間が、意識することがない微細な点についてパターンを発見すること。
例えば、特定の演奏者の録音を多数解析して、演奏者自身も意識してない、次のような微細の特徴を発見し数値化したりします。
– あるフレーズではテンポを落とす。
– 音が跳躍するときに、特徴的な鳴らし方をする。
– 特定の和音では、タイミングがわずかにずれる。
– 曲調によって音の立ち上がり方が異なる。

・無秩序に潜む秩序を発見すること
不協和音、リズムの破綻、混乱した音、非楽音などの中に、隠れた秩序があることがあり、例えば、複雑な現代音楽や、自由奔放な即興演奏や、楽音に分類されない自然音や機械音などの中に、音程の選び方、フレーズの長さ、休符の置き方、緊張と緩和の配置、周波数の関係など、一定の傾向が見つけたりします。

・作曲家や演奏家の個性を比較すること
多数の作品や演奏から、個人特有の傾向を統計的に抽出したりします。例えば、ベートーベンとモーツァルトの楽曲を多数分析比較することで、類似点や相違点などを詳細に分析することができます。

・音楽の変化を歴史的に追跡すること
たとえば、ある楽器の形状や調弦や奏法が時代によってどう変化したか、地域的な広がりはどうなり、音楽の地域差がどう変遷したか、などを詳細に分析することができます。

・人間が音楽を表現する言葉を分析すること
温かい音、透明感がある、もの悲しい、リズムに生命感があるなど、様々な感覚的な表現と音楽の関係について、音色、倍音、アタック、音の減衰、テンポの揺れ、音程関係、その音楽の文化的背景などを総合して分析する可能性があります。