あれこれいろいろ

江戸隅田川(大川)の船遊び 船上の音楽

隅田川(大川)の一番下流の渡し場が佃(佃島)で、江戸時代以降、上流の山谷堀・鐘淵・向島あたから下流の佃島辺りまでを流す屋形船の舟遊びがありました。その船には柳橋あたりの芸者の姿があって、三味線の歌声がにぎやかに川面を流れていきました。

その隅田川の旋律型に、「佃」「佃節」「佃の手」「佃の合方」等と呼ばれるものがあり、川の流れが見えるような軽快な音楽なのですが、それも決まりきった形ではなく、船足の速さに合わせて弾いたり、船の上りと下り、橋をくぐる時、船と行き会う時など、様々な弾き方で、船遊びを盛り上げたそうです。

船遊びと音楽と言えばヴェネツィアのゴンドラ歌がありますね。流れる川の上というのは、音楽を生むゆりかごなのでしょうか。ショパンやメンデルスゾーンもピアノのための作品として舟歌を書いています。

隅田川の花火の日などは殊に賑やかで、冒頭の絵のように、芸者や幇間やお囃子や影芝居を乗せた船がひしめいてあちこちから三味線の音が鳴り、その間を縫う真桑売りだの、枝豆、汁粉、ゆで卵売りだのから声がかかり、橋の上からは玉屋鍵屋と声も聞こえます。

日常の足としての渡しでは、一人一文の均一料金で、士農工商の別なくいっしょくたに乗り合わせ、三河万才常磐津など、川を渡る三味線の姿はいつもの風景。

さて、江戸時代に作られた歌詞ではありませんが、何もかもをいっしょくたに乗せて流れゆくような隅田川の小唄にこんなのがあります。

〽さまざまの 思いを乗せて川の水 憂いも辛いも知り抜いて まして楽しいなつかしい 人の情も知り抜いて 闇の夜も間も止まらぬ 流れ流れる隅田川

(田中青滋詞 春日とよかよ曲)

参考文献・「近世邦楽の描く江戸の名所 〈佃〉を中心に」 竹内有一

「小唄江戸散歩」平山健

 

RELATED POST