ルネサンスギター

ルネサンスギターの図面を検討中 いまむかしウクレレ

ただいま、古楽器奏者の岩田さんに計測させてもらった二本のルネサンスギターのデータと、フロリダ沖で沈んだ船から引き揚げられた4コースギターの破片から復元されたデータとを参考にして、一十舎で作るルネサンスギターの図面を検討しています。

ルネサンスギターが最も普及していた15世紀.16世紀ころの現物で残存しているものは世界に存在しないので、当時の絵なども参考にしたり、もう少し後の時代のギターの姿も参考にしたりします。

ルネサンスギターは、現代のギターやウクレレとはいろいろ違うところがあり、たとえば、独立の指板がないこと、複弦であること、サドルがないこと、ガットフレットであること、サウンドホールが透かし彫りロゼッタであること、全体のデザインが細身、薄身であることなど、様々な今と異なる特徴があります。しかし、それでもなお、研究すればするほどに、最終的に私が思うことは、「これは基本ウクレレと同じだ」ということなのです。

ウクレレは、「いまルネサンスギター」、あるいは「ルネサンスギターが今なお残っているルネサンスギターの一種」と言ってもいいように思えてきました。

ルネサンスギターは民衆のギターとして、15、16世紀から普通の人々の間に広く親しまれ、一般の生活に浸透していたギターのようで、それが各地に広がってあちこちの民族楽器となり、そのひとつのプラギーニャがハワイにもわたってハワイの民族楽器ウクレレになるというのが大きな流れのようです。

これに対して、17世紀ころから発展したバロックギターは、民衆よりも貴族の楽器として普及し、宮廷などで独自の発展を遂げ、それが市民革命期以降富裕市民層にも広がり、19世紀ギターから現代ギターにつながる流れを形作ったようです。

抽象的な言い方ですが、ルネサンスギターは民衆レベルで広く各地に広がって、地域や風習に適合するように変化しながら各地の民族楽器として普通の人々の生活に密着して残るという水平方向に動いたギターの流れで、それに対して、バロックギターから19世紀ギター、現代ギターへの流れは、貴族や王室や富裕市民層がお金をつぎ込んで高みを目指して磨きあげるという形で垂直方向に動いたギターの流れのように思えます。変化の方向性がちがうのだと思います。世界の地域に広がる中で土地や風習に合わせるように変化した流れと、富裕層の中で高みをめざすように変化した流れがあるように思えます。

現在では、ルネサンスギターは、発展から取り残されて消えかかっている存在のように、あるいは昔の庶民レベルの昔の風俗画にしか残らない程度のもののように語られることがあるようなのですが、それはあくまでも、垂直方向に発展してきた楽器目線からはそのように見えるだけで、水平方向目線から見ると様相は一変し、ウクレレやカバキーニョなど、現代にも途絶えることなくその流れが続き、各地の民族楽器として確かな文化の担い手になり続けてきて、今も現役バリバリにますますエネルギッシュになっていると見えてくるのです。

さて、こういう大きな流れの中で見ると、ウクレレはまさにルネサンスギターの水平方向の流れがそのまま今に辿り着いたものです。実際、ルネサンスギターの図面を見ていても、現代のウクレレと基本は変わらないなあと思うのです。

ルネサンスギターは「むかしウクレレ」で、ウクレレは「いまルネサンスギター」で、このふたつを繋げて円環にして、「いまむかしウクレレ」あるいは「古今ウクレレ」のようなものを作りたいというイメージが私の中に漠然とですが確かに湧いてきています。